本当に費用対効果のあるパネル洗浄を行うには、どのような点に注意すべきなのか。太陽光発電の第一人者である宮崎大学の西岡賢祐教授に重要なポイントを聞いた。業界最大手PV Japan のパネル洗浄を行ったO&M 大手3社のリアルボイスもともにお届けする。
太陽光発電システムを長期的かつ健全に稼働させ続けることは、事業者の収益性を確保するうえでも、脱炭素化やエネルギー自給率の観点からも意義が大きい。宮崎大学工学教育研究部の西岡賢祐教授は、太陽電池など半導体に関する技術研究の第一人者だ。西岡氏は、太陽光発電システムの健全性を維持するには、周辺環境、劣化・故障、汚れなど、出力低下の複雑な要因を取り除くことが大切だと話す。「パネル洗浄の必要の有無や、洗浄が必要な場合の洗浄頻度は、設置環境によって決まります。設置環境が良好なケースでは、汚れの影響を受けにくいこともあります。そのため、パネルの汚れ具合を把握し、費用対効果を検証したうえで洗浄することが、収益性を向上させるために重要なのです」。
ところが、現実には「費用対効果がわからない」という理由で、パネル洗浄に踏み切れない発電事業者やO&M企業も見受けられる。費用対効果のある洗浄を行うにはどうすればよいのだろうか。「注意すべきポイントは、事前診断、確かな技術による事故のない洗浄、事後診断の3点。洗浄による収益の向上が洗浄コストを上回らなければ、費用対効果はありません。事前診断で洗浄すべきパネルを特定し、タイミングを見極めて洗浄することが重要です。洗浄時には、作業の安全性を担保することが必須。洗浄装置の局所的な荷重や振動によるモジュールへのダメージに配慮するなど、確かな技術と経験に基づいた作業が求められます。また、洗浄後に期待された効果が得られているかについても、正確かつ迅速に評価する必要があります」。
その一方で、パネル洗浄に関する公的なガイドラインなどが整備されておらず、技術が規格化されていないという課題もあると指摘する。より多くの事業者が洗浄に取り組むには、安心して洗浄が依頼できる指標を設けることが重要だという。パネル洗浄の最大手であるPV Japanは西岡氏と共同で、パフォーマンスレシオ(PR)値など、データや科学的根拠に基づいた洗浄の効果を幅広く検証している。「発電データやパネルへの影響などを物理的・科学的に評価することによって、安心かつ安全なパネル洗浄技術の確立をともに目指し、再生可能エネルギーの健全な普及に貢献したい」と西岡氏は述べている。